現場にはお金が落ちていと言われるが、現金(ゲンナマ)が落ち
ているわけではない、商いのネタが落ちている例え。
同じく見えないが、現場には様々な生きる為に必要な法則も
落ちている。
3歳から家業であった鉄工所にデビュー、おどおどしくて、独特
の油臭い匂い、危険を感じる機械音、TVもファミコンもない時
代、餓鬼が惹きつけられる魅力が鉄工所にはあった。
キサゲ(シカラップ)で金属表面を平坦にして行く作業は芸術的。
職人が腰にキサゲを当て腰を前後させながら機械加工された規
則正しいツールマークに綾目・市松・三角・三日月・千鳥と模様
が刻まれていく。
日本画で使用される赤色顔料である光明丹(こうみょうたん)を
薄く塗り、基準となる定盤を擦り合わせ凸凹を見える化。
塗料が剥がれた金属面が凸、そこをキサゲする黒あたり。
定盤に光明丹を塗って製品に擦る、凸が赤くなりそこをキサゲす
る赤当たり。職人さんの自慢げなお話に無我夢中。
工作機械で加工された物は、その工作機械以上の精度は求め
られない(母性原理/copying principle)。それ同等、それ以上に
求められ時に必要な技能がキサゲ作業、うっとりするね。
ものづくりに魅了された餓鬼が工業高校、工業大学と進み、自動
車会社に就職、そして家業へ。今は、油臭さがないはんだ付ロボッ
トメーカのCEOの席に着く。
偶然では無い、三つ子の「門前の小僧習ならわぬ経を読よむ」か
ら始まった必然性。
30歳を超え、刈谷市にあった自動車部品工場の現場に立つ。点
火プラグの中心電極を製造する装置を納に来たのだが、沢山の自
動機が百花繚乱、楽しくてしようがない。
きょろきょろ、うろうろする菜っ葉服(なっぱふく)姿の若者に工場責任
者と思われるオジサンから𠮟責が飛ぶ、不審者と思われたようだ。
ここからのご縁で三重県大安から愛知県西尾へと紡がれて行く。そ
こで学んだのが、5ゲン主義。
現場・現物・現実そして原理・原則、専用機を請け負うのはいいが
お客様が要望する検収条件「チョコ停ゼロ、1時間無停止」をクリア
するために法則がそこに隠されていた。
RZantからBEETLE、これを世に出す前の長い歴史があってこそ。
BEETLEを語るにはまだまだのエピソードがある、来週に続く。