商いはリアルタイムに現生(現金)の入りと出とを計る
一流なんていつから意識してきたのだろうか、社会
規範を備えた、技量だけでない人間性にも優れた
先見性を持ち合わせた凄く深い尊敬の念を抱かせ
る人が一流というのだろうが、よく考えれば数値で
表現できない定性的評価の色合いが濃い。
先生や年上、年代的に新聞やTV等のマスコミ、高
学歴者や政治家、立身出世者のオピニオンを鵜呑
みにしたり、偉人の生き方に憧れて漠然として過ご
した時代人にとって、社会に出てから直接出会う一
流との出会いは刺激的であるが、絶対的な一流は
あり得ないことを学ぶ。
中鉄工所製プレス機械販売先の大半は零細企業
のプレス加工業者向け、ダイハツミゼットの助手席
に乗せられよく現場に連れていかれた。親方や従
業員の両手にある10本の指が満足に揃っていな
い事が多かった。「指落とすんやったら親指が高い
で」とおしゃべりする恐ろしい会話も耳にした。やく
ざの世界ではないが指がないのが一人前とか一流
やと言われた時代であった。
数十トンにも及ぶ加工能力を持ち合わせた加工点に
足踏みのタイミングに合わせて手を差し入れて加工
物を数秒の間に出し入れする、危険極まりない作業。
工賃仕事ではそのサイクル数が生活の糧、ガッシャン
一回毎に¥がちゃりん、神業の域まで人は追い込ま
れる。成人し、プレス機械の修理の際に小指を金型
に食われ救急病院に駆け込んだことを思い出す。
幸いに骨がむき出しになり肉がえぐられた程度で済ん
だが今も右手の小指は曲がったまま、一流の仲間入
りが出来たのだ。
昭和30年代頃から安全対策が始まり、昭和47年(19
72)の労働安全衛生法の施行に伴い、ノーハンドインダ
イの原則が労働安全衛生規則第131条に盛り込まれ、
動力プレス機械構造規格により、急停止機構などの規
格が設けられた。中鉄工㈱に入社した頃にはメーカによ
る自主検査も実施されメーカとして講習会に出席したが、
お上からの昔ながらのメカプレスしか生産できない零細
プレスメーカへの最後通牒、まさに安全を担保できない
三流メーカにはには明日は無いを突き付けられる。
<一流だからこそ一流を選ぶ、選ばれるために2>
一流プレスメーカになるために安全装置を取り入れた図
面を引き、装置を完成させ足掻くが・・・・・・・・。